守る会・研究所便り2025年10月号

10月のお送りする有機栽培米(新米)は次の生産者です。
有機白米・玄米コシヒカリ 浦田 優さん(栃木県下野市)
 次回は11月1日(土)配送予定です。
 御都合の悪い方ご連絡くだされば対応いたします。
摩訶不思議なおコメの値段

●令和7年産米の価格:
JA全農とちぎから今年産の概算金払いが、31,000円(コシヒカリ1等米、60当たり)と、発表されたことはご存じのことと思います。当初は28,000円でしたが、3,000円が追加上乗せされました。前年の令和6年産が16,300円ですから約1.9倍もの値上げとなりました。過去10年間では令和2年産が底で、その時の概算金は9,000円でしたから、3.4倍にもなったわけです。JA全農とちぎの担当者によると、「高騰する燃料費や肥料代など生産コストなどの上昇分を反映した」と説明し、生産者に後継者を育成する余力が生まれるようにも配慮したとのこと。また3,000円の上乗せは、集荷業者との間で買い取り競争が過熱していることから、コメが出回るこの時期に確実にJAとして確保するため、と報道されています。

●コメの生産費:

コメを生産するのにどのくらいに費用がかかっているのか、農水省の生産費調査からみてみます。令和4年産で60kg当たり15,273円、10a当たり128,932円でした。生産に関わる費用調査であるので、販売などに係る費用は計上されていないことに留意。この3年間であらゆる物価が高騰したわけですから、販売費用などを加味しても今年産の費用は2万円をやや上回る数字になるのではないでしょうか。むろん、収穫量によっても大きく変化しますが。

●価格はどのようにして決まるのか:

モノの価格はどのようにして決まるのか、改めておさらいしてみます。モノの価格は、売り手が勝手に決めているのではなく、需要量(与えられた値段で買いたいと思う)と、供給量(与えられた値段で売りたい)とが等しくなる(需要と供給が均衡する)価格で決まります。過剰も不足もないように価格が決まるのであって、売り手が勝手に決めているのではなく、それでは買い手が決めているのか。そうではなく、その答えは市場(シジョウ)なのです。市場とはモノの価格の決まり方を分かりやすく説明するために、経済学者が考え出した「架空の場」なのです。

供給曲線(売り手の行動)は右上がりの曲線、需要曲線(買い手の行動)は右下がりの曲線になります。供給曲線と需要曲線の交点が、売り手も買い手ももっとも満足するところになります。この「需要」と「供給」の一致するところの価格を市場価格(均衡価格)といい、市場で取り引きされる商品量も決まります。市場価格は、その時の天候や技術革新などによって需要や供給が変動することで変化します。

●理論と現実との乖離:

経済学の古典的な理論からみた時、今年産の米価(概算金)の決め方は理にかなっているでしょうか。業者間の価格競争が大きく影響しているといってよいでしょう。テレビや新聞などに報道される農家の人の話は、大方は戸惑っていたというのが筆者の感想です。食用米もさることながら、酒米もかなり値上げになると思われ、世界遺産の日本酒の売り上げに影響をもたらすでしょう。リバウンドが怖いと。あるいは、生産者と消費者がwin‐winの関係が保てる米価であってほしいと。こうした農家の声には、「今だけ オレだけ カネだけ」ではない心優しさが表れていると感じます。

●生産者と消費者がwin‐win関係を保つには 農産物価格の大部分は、生産者である農業者が決めていない「商品」です。透明性があり、お互いが納得するには、まさしく科学的根拠に基づいた価格交渉をしたらどうでしょうか。管制の統計数字ではなく、自らの経営から得たデータを基に価格交渉をしたらいかがでしょうか。お互いが納得できるはずです。生産者から経営者への転換が、農家の人たちの大きな課題といえます。

昨年度、私たちは市民講座において「アグロエコロジー」のことを学びましたが、その中心的な課題の1つが、グローバール企業などに分断されてしまった生産者と消費者の関係を、再構築することであること学びました(参加された方々は思い返して)。

<トピック>

「米一粒 汗一滴」

狂歌は、和歌の伝統的な31音形式を踏まえながら、音の単価構造に則った社会風刺や滑稽さを盛り込んだ歌です。その起源は平安時代といわれています。瑞穂の国にふさわしくおコメに関わる狂歌もたくさんあるようです。今流行のAIを活用して2つの狂歌を紹介してみます。

  • 「おぼしめしより米のめし」:
    この歌の表現のおもしろさは、「思召し(おぼしめし)」と「飯(めし)」をかけた語呂合わせになっています。この語呂合わせが軽妙なユーモアを与えています。この歌は、身分の高い人の口先だけの好意よりも、腹の足しになるご飯のような具体的なモノのほうがありがたい、という意味が込められています。権力者の空約束よりも、目に見える具体的な糧のほうがはるかに貴重だと声を上げる人の、粋な心根がイメージされます。この歌は現在の永田町を彷彿させると思いませんか?
  • 「米一粒 汗一滴」:
    漢字6文字の中に、コメつくりの大変さを平易な表現ですが、的確に核心に触れています。ちなみに、コメ1㎏は約42,500粒ですから、コメ1俵(60㎏)では255万粒になります。したがって、コメ1俵を生産するのに255万滴もの汗を流すことになるわけです。私たちが食べているおコメは、農業者の汗と涙の結晶なのです。ですから、農業者の努力、自然の恵み、食べものへの感謝を忘れてはいけません。ですから、食品ロスは極力避けるとともに、農家の仕事への対価をきちんと理解すべきと思います。

    (文責 齋藤一治)