守る会便り2024年11月号

11月のお米は有機栽培 白・玄米コシヒカリをお送りします。
生産者は郡司利一さん(茨城県水戸市)
次回は11月2日(土)配送予定です。 御都合の悪い方ご連絡くだされば対応いたします。

令和6年産米を巡って =過去に学び 今を知り 未来を創る=

守る会代表取締役  稲葉勇美子

東大の鈴木宣弘特任教授の『世界で最初に飢えるのは日本』というご著書のタイトルを目にして、「日本が飢える?そんなばかな」と思われた方も多いのではないかと思います。テレビのチャンネルを回せば食べ物番組がどこかで放映されていますし、スーパーには棚にあふれるばかりの食品が並んでいます。ところが夏になると米の棚が空。備蓄米をという声にも農水省は反応しません。米の値段が高騰。有機米より高い慣行米(現在も高止まり)の値段に有機米生産者はムカつくばかりです。識者が色々解説してくれてはいますが、ストンと腑に落ちません。様々な要因があるでしょうが、私が身近に感じている大きな要因は気候変動と、政府の農業軽視と無策からくる農業者の減少です。農業に適さない天候と作る人が少なくなれば米が不足するのは当然のことです。

当会の設置理念は持続可能な安全な食料を作り、安心して消費してもらうことにあります。生前、稲葉光國は「農薬や化学物質に被爆せず、健康で耕作し、自分の生産した作物を自分で値段を付け流通させる自立した農業者と、それを支える消費者や地域をつくることがこの会の大きな役目だ」と口酸っぱく言っていました。有機稲作の基礎的な技術を編み出し、生産者とともに普及につとめ、穀物業者や消費者会員を募り、当会を動かしていました。2011年の福島原発事故のときには、付き合いのあった業者さん消費者の皆さんに助けられ、続けることができました。全量の焼却証明書がなければ補償しないという東電の言い分に対し、全量放射能検査をし、安全を示して生産者からお預かりしたお米の全量を皆さんに買い支えていただけたのです。北関東の米ということだけで、スパッと手を引いた業者や消費者のなんと多かったことか。

今回、当会の生産者米価は生産者の希望価格より低いです。慣行米と同じかそれより安いなんてやっていられないと出荷を手控えている節も感じられないこともないですが、それはそれで自立して販路を持てたならいいとしなければとやせ我慢しています。高く買えば喜んで出荷するでしょうが、一方、消費者に高く売らなければなりません。原発事故後の生産者を支えてくれた消費者の皆さんに感謝の気持ちをこめ、少しばかりの値上げになってしまいました。生産者の皆さんごめんなさい。生産者と消費者とが車の両輪のように動く会であってほしいと願うばかりです。

6年産米の状況は農水省発表の作況指数102でやや良ということですが、当会の生産者はそんなに穫れていないといいます。イネカメムシの大量発生や高温障害、雑草が原因のようです。出荷手控えも重なり、今年の集荷量は契約にも満たないおそれあり。「日本の稲作を守る会」の「守る会」を作らねばという古谷慶一さんの言葉が現実味を帯びてきます。

今回、嬉しいお知らせがあります。当会では今でも出荷する米の放射能検査を全員提出してもらっています。この中で、13年間どうしてもセシウムが不検出にならない生産者がおられます。日光地区のおいしい米なのですが。5ベクレル以下の数値なので、精米して糠を取ると不検出になりますが、玄米で0でないと業者に出荷できません。美味しい米なのに10年以上悔しい思いをしておられたと察します。それが今年は不検出になったのです。事故直後から稲葉の指導もあり、いろいろな方策をとられ、今年の米は不検出になったのです。彼にとってやっと「フクイチ」は終わったといえるでしょうか。(慣行米は今でも100ベクレル以下でOK)。会としても嬉しい限りで、皆さんとこの喜びを分かち合いたいと思います。

恒例のよつ葉生協稲刈り体験 “暑き”なかで開催される

10月19日(土)、よつ葉生協農業体験で研究所の稲葉農場で稲刈りを行いました。6月に組合員で田植えをしたハブタエモチは、見事に金色の穂を実らせていました。14組40余名の参加者がありました。今回も、研究所常任理事の川俣さんにご指導いただきました。

朝までの雨は見事に止んで気温がどんどん上がり、子どもたちはやる気いっぱい!川俣さんから鎌の使い方、ケガをしないよう刈る時の注意、稲わらでの束ね方を教わりました。稲を束ねる作業は力もコツも必要で時間がかかります。子どもたちの稲刈りスピードに負けないよう、大人たちで頑張って束ねました。

稲架掛けにした稲は、1週間ほど天日干しされます。「農家さんが大変な思いをしながら作っているのがよくわかりました」「稲架掛けはどこもやっていないので参加しました」など感想がありました。作業のあとはお楽しみのおもち、川俣さん特製のずんだ餡、守る会の新米、豚汁、お漬物など秋の恵みでお腹いっぱいの楽しい一日になりました。

今夏からの米不足で、米が店頭になくて困ったという話を本当にあちこちで聞きました。異常高温、ゲリラ豪雨など一年一作の大変さが顕著になり、お米があるのが当たり前のように感じていたのは間違っていたと実感した機会でした。今年も登熟期の高温によるシラタ米が出ています。美味しく食べられることを伝えるとともに、消費者の理解、生産者と直接つながり支え合う仕組みがさらに大切になると考えています。(よつ葉生協 三輪英理子)